重要なのは資金の流れる方向である。


 多くの人は、資金の量ばかり問題にするが、重要なのは、資金の流れる方向なのである。資金をいくら投入してもそれが、返済の側に流れ、投資の側に向かわない限り、市場には資金は循環しない。更に、回収された資金が実業に流れず。金融市場や資本市場に流れれば、バブルを再発するだけである。

 重要なのは、市場に投下される資金の量でなく。資金が流れる方向である。現在の経済現象は、資金の偏在によって引き起こされている。一方において、資金が流れない部分があれば、他方に過剰に資金が流れている部分がある。流れなければならない部分に資金が流れず。流れては成らない部分に資金が多量に流入している。それが過剰流動性の本質である。つまり、過剰流動性の問題は、過剰に流れている箇所だけを取り上げても意味がなく。むしろ資金が流れない部分、滞留している部分の方が深刻なのである。

 現代の経済危機は、市場の収縮によってもたらされている。市場を収縮している原因を取り除かない限り、問題の解決には至らない。問題を解決するどころか、悪化させるだけである。

 市場を収縮させている原因は、収益の収縮である。つまり、収益構造が市場の圧力によって圧縮されていることが第一の原因なのである。実業が健全な収益構造を回復しない限り、縮小均衡に向かう市場の流れは止められない。

 資本主義というのは、近代会計制度上において成立した思想である。故に、近代会計制度が理解できないと資本主義は理解できない。

 総資産、則ち、総資本が収縮すれば、回収側、つまり、返済の方向に資金は流れる。逆に、総資産が拡大すれば投資の方向に資金は流れる。自己資本規制は、資金の流れを回収の側に向かわせる。実施する際は、慎重に行うべきである。
 原則として金利の上昇は、回収側に資金を向かわせ、金利の下降は、投資の側に向かわせる。ただし、金利による効果は、前提条件に左右される。

 補助金のような施策は、一時的に企業の収益を改善する効果は期待できる。しかし、あくまでも一時的な効果である。
 企業自体が収益を改善できる様な仕組みを作ることが重要なのである。

 実業に資金が流れないのは、収益構造と不良債権問題の問題である。特に、収益構造、企業が市場で適正な価格を維持できないことにある。収益が確保できない中で不良債権処理に追われれば、経済は縮小均衡に向かわざるをえない。
 まず、過度の競争を抑制し、適正な価格を維持できる体制を採ることが重要なのである。過当競争を放置すれば、いずれ市場は寡占独占状態に向かうであろう。しかし、それは市場の機能の劣化を招く。


                   


ページの著作権は全て制作者の小谷野敬一郎に属しますので、 一切の無断転載を禁じます。
The Copyright of these webpages including all the tables, figures and pictures belongs the author, Keiichirou Koyano.Don't reproduce any copyright withiout permission of the author.Thanks.

Copyright(C) 2009.11.02 Keiichirou Koyano