ロシアの選択について

 NHKスペシャルの「プーチンのリスト」を見た。ロシアの選択は、懸命な選択だと私は思う。ただ気になるのは、新興財閥があたかも国家に屈したかのような番組の作り方である。
 現代ほど、国家というものが忌み嫌われた時代はあるまい。国家の利益と企業利益とを伴に追求するのは、それほど悪い事であろうか。日本の報道機関は、反国家、反体制的でありすぎる。
 経済危機や経済の構造を機動的に変更しようとした場合は、集権的体制の方が迅速に執行されると思われる。鍵を握るのは速度であるからである。
 問題は、これからである。要は、円滑に展開できるかである。その為には、周囲との融和を重んじ、極力、紛争を避ける必要がある。先ず経済体制の確立に専念する必要があるからである。
 経済をいかに制御するかが鍵を握っている。その場合、統制ではなく。規律が重要なのである。


 生産手段の所有の在り方が、自由主義、社会主義、共産主義の言った経済体制の違いである。
 現実の経済は、混合経済がほとんどである。純粋の自由主義経済や社会主義経済、共産主義経済体制というのは、ほとんどみられなくなった。自由主義のメッカであるアメリカでさえ、銀行の国有化が俎上に上がっているくらいである。

 経営者が、生産手段を所有する形態、生産手段を借りる形態、生産手段を委せられる形態がある。
 生産手段を委せられるというのは、雇用されることを意味し、予め決められた、あるいは合意した基準によって報酬が支払われる形態を意味する。

 経営者に求められるのは、一つは、組織運営者の側面であり、もう一つは、組織設計者の側面である。


 恐慌で問題なのは、財を必要としているのに、財を購入するための資金が廻っていないという事なのである。
 故に、恐慌に対する対策は、資金を循環させることである。つまり、買い手に資金が廻るようにすることである。買い手は、財を必要としているのであるから、資金が廻れば需要は喚起される。
 その為には、雇用を作り出して、資金を供給することである。ただ、それは、闇雲に公共投資を増やせばいいと言うのではない。資金や財の環流は、市場のおける空間的差、時間的差によって生じる。

 ゆえに、公共投資による景気の浮揚は、市場の差を利用しないと効果が上げられない。なぜならば、資金を循環させ、景気を活性化するのは、市場における差の活力だからである。
 一つの産業が興隆する初期の段階に公共の資金を投入すれば、市場の所得が先行的に上がり、成長による時間的差を先取りすることによって景気は活性化する。しかし、成熟段階に在る市場に資金を投入しても新たな需要ぱ喚起されず。市場は活性化されない。むしろ、余剰の資金が金融市場に吸い上げられ、滞留して過剰流動性を引き起こす原因になる。つまり、成長が見込める産業に集中的に資金を投入しない限り、資金は環流せず。市場に偏りを生じさせるだけの結果に終わるのである。
 もう一つ重要なのは、市場に万遍なく貨幣を行き渡らせる必要があることである。その為には、市場の密度を高めるような形で資金を投入する必要がある。

 何が重要なのか。それは、希望。希望である。

 金融危機は、金融機関が持つ債権の劣化が問題なのである。金融機関の持つ債権というのは、金融機関から見て貸付金を意味し、相手側から見ると債務を指す。信用は、貸し付けを通じて創造される。つまり、いくら金融機関の資本を増強しても、即、信用が創造される、つまり、資金が市場に流通するわけではない。貸付金に転化されて始めて資金は、流通する。仮に、注入された資金が劣化した貸付金を補うために使われれば、資金は、市場に供給されない。
 問題は、金融機関の債権と債務、即ち、総資産と総資本が不均衡になっていることが問題なのである。金融機関の債権の劣化を是正するためには、金融機関の債務を圧縮するか債権価値を高めるしかないが、金融機関の債務は、預金であるために、これを圧縮することは出来ない。そうなると、債権価値を高める以外には、資金を市場に流通させる手段はないのである。
 公共投資もこの債権価値を高める効果があるならば、金融危機に対しては有効な手段であるが、債権価値に影響を与えない場合は、あまり、効果は期待できない。

 大体、金融危機の背後には、金融機関の収益の悪化がある。金融機関の収益の悪化の原因は、貸付先の減少とそれに伴う不良かである。貸付先が減少した結果、ある程度のリスクを処置の上で住宅ローンや株式投資に傾斜したのである。そして、一方は、証券化、他方は、ヘッジファンドを生み出し、混乱の種を蒔いたのです。

 金融機関がなぜ、優良な貸付先を失ったかと言えば、市場の成熟が考えられる。つまり、市場が成熟し、設備投資が一巡すると新規の資金需要が減る。また、新たな資金需要があったとしても企業は、資本市場から資金を調達するようになる。その為に、金融機関は、優良な貸出先が減少し、貸し付けが減少する。貸し付けの減少は、信用の減少を招き、市場に流通する通貨を減少させる。通貨の減少は、デフレを発生させ、更に、企業収益の悪化を招くのである。


 貨幣の特性の一つに蓄積性がある。つまり、貨幣は、必要以上に流通すると貯蔵される正確がある。貯蔵されるというのは、退蔵されることを意味する場合もある。
 一般には、通貨が過剰に供給されるとインフレを引き起こすと想われているが、それは、物的市場と貨幣的市場が相互に作用することによって起こる現象であり、通貨の流通量と言う一面から判断されることではない。
 財が不足している時に貨幣が過剰に供給されれば、インフレを引き起こすが、市場が過飽和な状況では、貨幣は、退蔵され、必ずしもインフレを引き起こさない。逆に、市場が過飽和な時は、買い控えを呼んでデフレに陥る場合すらある。

 つまり、成熟した市場では、金があっても使わなくなるか、使っても無駄遣いする。貨幣が退蔵されるようになると、通貨の流通、通じが悪くなる。


 貨幣経済の基盤は、決済制度である。金融危機の多くは、この決済制度の障害によって引き起こされる。



                    


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