群と同型


 貨幣制度は、財を分配するための巨大な装置なのである。数値に誤魔化されてはならない。大切なのは、働きであって、貨幣制度にどの様な機能を期待するかが肝腎なのである。それに対して数値は結果である。機能を発揮できるような数字を出せる仕組みにかえればいいのである。
 市場は差を付けることによって動かされている。人は、差によって自分を位置付けることが可能となる。
 しかし、差を付けるなどと言うと現代人はすぐに、差別と結び付けて考えたがる。差を付けることを差別に結び付けて闇雲に否定していたら、合理的な差が付けられなくなる。その結果、目に見えない差別が蔓延するのである。
 合理的な差を付けるための基準は、労働に置くべきである。労働に対する評価を基礎にしてグループ分けをし、それを評価に結び付けることである。
 合理的な差を付けるための根拠、基準は、能力と働き、そして、功績である。
 問題は、不労所得である。
 社会保障が悪いとは言わない。しかし、それが勤労所得を削ぐようなものになったら話は別である。一般労働者の最低賃金を生活保護費や失業保険が上回るようになったら話は別である。それでは、汗水垂らして働く事が馬鹿げてきてしまう。
 それは社会保障、本来の目的を逸脱している。社会保障費によって財政が成り立たなくなったら、本末転倒である。保証すべき社会が成り立たなくなってしまうのである。

 金本位制から変動為替制に移行した時点で、実質的に金本位制から土地本位制へと移行したのである。資本を担保する物は土地しかないからである。ただ、金本位制と違って土地本位制というのは、無自覚である。
 土地本位制では、土地を担保とした負債によって市場の基礎が形成される。また、主要貨幣である紙幣の源は、国家の負債なのである。それが、債権と債務の均衡、ゼロサム関係を生み出すのである。つまり、債権に裏付けられた債務が貨幣を供給し、供給された貨幣によって財の分配を実現する。それが土地本位制度の根本的仕組みである。
 土地本位制と言っても土地は、通貨圏間の決済に用いることは出来ない。故に、通貨圏間の決済では、外貨準備が重要な役割を果たしている。
 土地本位制である事はサブプライム問題が表面化した時に期せずして顕れた。
 土地本位制では、地価の相場が資金の流れる方向を左右する。
 地価の上昇は、表に表れない経営主体の資金の調達力を増加させる。逆に、地価が下降すると資金の調達力の低下を招く。資金の調達力が上昇すれば資金は投資に回るようになり、資金の調達力が低下すれば資金は回収される。それが、通貨の流通量を増減させる要因となるのである。通貨の流通量は、市場の景気を左右させる働きがある。
 この地価と景気との絡繰りが解らないと今の市場経済は解明できない。
 土地本位制では、地価の高騰は、景気の過熱を招き、地価の下落は、不況をもたらす。地価の動きの周期は、長いために、地価の上昇は、持続的な経済成長を源となる反面、地価の下落は、長期的な経済の停滞をもたらす。その点を充分に考慮して経済運営をしなければならない。地価の安定こそ土地本位制度下における経済政策の根幹となるのである。
 地価の相場が経済の下支えをするからである。
 土地本位制度では、国有地と国債の活用が鍵となる。
 土地本位制度では、道路の様な土地に絡んだ社会資本の持つ意味が重要である。土地が生み出す付加価値が重要なのである。効果的に道路を作れば、地価の上昇を招く。ただ、闇雲に道路を建設すれば、環境破壊や利権の巣窟となる。

 会計は、代数の一種だと言える。
 会計は、自然数の集合に加法と情報を加えた群である。
 会計は、加法と乗法を基盤として成立している。加法と乗法を基礎として減法と除法が成り立っているのである。
 その結果、会計は、基本的に残高主義にならざるをえないのである。自然数を基本とする事で個々の勘定は残高がマイナスになることは、許されない。必ず、個々の勘定は、0か自然数の値がなければ、会計は成立しなくなる。そして、最終的に現金残高に収斂する。
 勘定は、残高が、0を含む自然数であることを前提とした関数なのである。
 会計は、貨幣の流れが生み出した虚構である。この点が重要なのである。
 なぜ、会計のような虚構が生み出されたのか、と言うよりもなぜ、会計の様な虚構が必要とされたのか。つまり、人間は会計に対してどの様な働きを期待しているのか、その点を明らかにすることが会計現象を理解するためには不可欠なのである。
 会計制度を土台とした市場経済は、虚構である会計と実物経済との間に、名目的価値と実物的価値を生み出す。
 会計制度は、貨幣の流通を通じて金や物を人に分配する仕組みである。
 インフレーションやデフレーションといった貨幣価値を前提にした生じる経済現象は、貨幣が過剰に供給されたり、貨幣の供給が不足したりする事によって生じる。
 市場が会計制度を基盤としている場合、インフレーションやデフレーションの一因には、会計制度が正常に機能しない事も考え得る。
 この様な、貨幣経済を理解するためには、貨幣価値の蓄積性と変動性が重要な鍵を握っている。
 貨幣価値は、錯覚である。貨幣価値は、価値があると思うから価値があるのである。貨幣価値を認めなければ貨幣価値はない。貨幣価値は、無意味なのである。
 貨幣価値は、何等かの対象に結び付けられることによって価値を持つ。
 貨幣と貨幣価値を結び付けることによって貨幣は貨幣価値を持つのである。紙幣は、貨幣価値に結び付けられなければただの紙である。
 群とは、要素の間に何等かの相互関係がある集合である。構造とは、ある仕組みを持った集合である。
 つまり、構造において重要なのは、要素間の関係であり、又、関係付け、関連づけである。
 財政では、この関連づけが制度的に為されていない。それが財政破綻の最大の原因である。
 要するに、構造を考える場合、要素間の関係や働きを明らかにすることが大切なのである。逆に言うと構造化する場合は、要素間の関係付けをどの様にするかが、鍵を握っている。
 会計で言えば、数値間の背後にある勘定間の関係や機能をどの様に設定するかによって会計の働きは決定する。
 収益対費用、収益対資産、収益対負債、収益対資本、費用対資産、費用対負債、費用対資本、資産対負債、資産対資本、負債対資本の関係をどの様に構築するのか。それが会計の基本である。そして、その指標となるのが利益である。この関係を理解しなければ、市場の構造や現象を理解することは出来ない。
 そして、これらの関係を前提とした上で、資金の流れる方向と働きを解明するのである。
 その上で、市場の仕組みを構築し、市場に供給する資金の量と方向、金利(時間価値)を操作するのが政府の役割である。
 群とは、操作の集まりである。
 群とは、構造的な集合。群とは、働きの集合である。
 取引を記帳、起票する。仕訳帳に仕訳する。総勘定元帳に転記する。帳簿を締める。試算表に集計する。精算表を作成する。決算書を作成する。納税申告書を作成する。納税申告書を税務署に提出する。これらの会計処理上の一連の作業は、順番と位置と働きがある。身のような作業の集合は群である。
 取引は、{貸方|空取引、資産の減少、負債の増加、資本の減少、収益の発生}の集合と{貸方|空集合、資産の増加、負債の減少、資本の減少、費用の発生}を掛け合わせたものである。故に、取引は群である。
 取引は、反対取引を0、空取引、即ち、単位元になる。
 取引は、巡回群である。
 部分は、全体からなり、全体によって部分は制御される。それが構造である。
 組織の構造も又然りである。
 群の構造で重要なのは、形、形式である。群の中に潜む同じ型、同型をあぶり出すことが数学の基本である。
 会計の内に潜む同型こそが市場経済の構造である。
 会計の根本は同型にある。
 会計を構成する取引は、自己同形群を形成する。
 勘定は、取引によって取引主体と取引相手との境を軸にして回転する。その結果、取引主体と取引相手との勘定は、線対称となる。









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