四つの次元(抜粋)


 資本主義体制や自由主義経済は、人、物、金、時間の四つの次元から成る経済体制である。資本主義体制というのは、人、物、金の価値、及び、時間価値の均衡によって成り立っている。

 人は所得、物は生産、金は、支出、時間は金利に現れる。人、物、金の均衡は、時間の均衡、即ち、短期、長期の均衡によって実現する。
 鍵となるのは、人、物、金、時間の均衡をどの様な仕組みによって保つかなのである。
 その為には短期的には、損益におけるの単位期間均衡と資金における長期的均衡の二つの均衡の関係を明らかにする必要がある。

 国家経済を制御するためには、通貨の総量管理と比率が重要となる。それは、貨幣価値の根源が債務に基づくからである。通貨の総量管理は、国家債務の管理を意味し、国家債務の管理は、経済規模に比例してなされなければならないからである。
 貨幣経済体制では、負債というものはなくならない。負債を限りなくなくそうという発想は、貨幣経済を否定する考え方である。貨幣経済は、負債を能動的なものとして受容することによって成り立っている。
 通貨の総量管理と比率を調節するとは、部門別に貸借を明らかにし、貸借全体の水準と個々の部門が占める割合を調節することである。  

 時計の振り子が時を刻むように、振幅と均衡によって市場経済の動きは制御されているのである。

 経済で最も重要なのは、均衡と振幅である。 

 会計的均衡には、内的均衡と、外的均衡がある。内的均衡は、経済主体内部の均衡を指し、外的均衡とは、経営主体外部の均衡、即ち、市場の均衡を言う。

 現代経済体制は、借金を土台とした経済体制だと言える。

 負の空間の拡大が経済成長を促し、正の空間の縮小が経済成長を抑制する。その均衡によって現代経済の変動は制御されるのである。

 通貨の総量の水準は、余剰資金の総和、即、不足資金の総和である。
 そして、比率とは、家計の過不足、企業の過不足、政府の過不足、資本収支が資金に占める割合である。
 現在の資金の水準は、家計が貯蓄を積み増すと同時に、企業が借金の返済をしている為に、全体として縮小傾向にある。その分、財政赤字と資金収支が増大しているのである。つまり、現在の状況では、家計が預金を積めば積むほど、財政赤字は拡大する。
 個々の部門に蓄積される負債の量を清算する為には、資金運用の時間構造によって解消するように仕組む必要がある。故に、単年度予算制度では解消することは困難である。

 資金の過不足総枠は、貨幣の供給量によって決まる。又、資金の過不足の総和は、ゼロになる。
 市場の状態は、貨幣の供給量(ベースマネー)と貨幣の流通量(マネーストック)と物の需要と供給によって決まる。貨幣の流通量は、貨幣の供給量(ベースマネー)の回転数によって導き出される。

 問題なのは、構造的な残高は、蓄積されるという事である。この様な単位期間に基づく不均衡は、短期、長期の時間的構造によって解消する以外にはない。
 即ち、経済構造の長期的変化と単位期間における構造とを調節することによって解消するのである。
 それが、損益構造、貸借構造を明らかにする動機でもある。損益は、単位期間内の動的構造を表し、貸借は、一時点での静的構造を表している。

 不良債権は本質的に不良債務の問題である。不良債務は、一定の期間をかけて償却すべき性格の債務である。なぜならば、不良債務は、長期的資金の働きの問題だからである。

 現在経済の根本的問題は、家計と企業が借金を恐れているから財政と金融が過剰な借入をせざるをえなくなっていることである。

 経済主体間の資金収支、資金の過不足の均衡を考えると七つの形相、局面に分類できる。

今の経済は、ボイラーの空焚き状態に似ている。市場経済を制御するのは、市場の仕組みである。市場の仕組みは、市場に働く正の働きと負の働きによって成り立っている。経済の働きで、正の働きばかりを見て、負の働きを無視すれば市場を制御する事はできない。

 歳入とは、貨幣の回収装置である。現在の歳入の仕組みは、税制度の多くを依存している。それは、国家事業において営利という思想が欠如しているか、或いは軽視されているからである。
 公共という思想の中に、営利という思想を排除しようとする傾向があることが最大の問題である。そこから、公共事業の民営化の発想が生まれる。しかし、何でもかんでも公共事業を民営化してしまえと言うのは乱暴である。
 公共部門が、期間損益という思想を受け容れないことが最大の原因なのである。要するに、利益は、悪いという価値観を変えればいいだけである。思想の問題である。

 歳入の仕組みや国家債務の在り方を見直すとは、ギリシアを例にすると、観光資源を資本として観光事業を株式化する様なことである。
 株式化することによって公務員数、公的債務を削減する一方で、民間投資を促し、産業を興し、民間の雇用を創出する。
 また、規制を強化して観光資源や規律を国法によって守る。観光資源や観光サービスをの質を向上させることによって観光客によって利益をあげる。
 ギリシアで問題なのは、世界有数の観光資源を資産化できないでいる事である。
 自国の資源に対する自覚が低く、その為に、サービスも悪い。それが、ギリシアの国家資産の価値を著しく毀損しているのである。

 経済は、生きる為の活動だというのに、どの様な社会を、どの様な生き方をすべきかの思想が欠けているから、経済の本質を見失うのである。



                    


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