負の働き



 貨幣の流れる方向は、負の部分の働きに負うところが大きい。負の部分というのは、資金の調達と回収に深く関わっているからである。負の部分の働きを解析しない限り、資金の流れる方向や力を明らかにすることはできない。負を文字通り、消極的な働き、又、否定的な働きとばかり考えていたら、貨幣の持つ働きや力を積極的に、肯定的に活用することは不可能である。
 負債の働きを規制する要素は、長期、短期という周期と流動性である。


 経済の異常現象の原因は、物質的な要因として、過剰生産と物不足の二つがある。貨幣的観点から見た要因は、貨幣の過剰供給と貨幣不足。人的要因から見ると過剰消費と買い控えである。
 人、物、金の動きが一方に偏った時、経済は抑制を失うのである。この様な偏りを防ぐために市場の仕組みと規制が必要となるのである。


 規制というのは、非常に繊細である。どの様な効果を期待し、何を、どの様な局面を、どの様に規制するか、それによって規制の効果は微妙に違ってくる。
 例えば、バブルを潰そうとして執行された金融規制の際、ノンバンクと農林系金融機関に対する規制がもれたために、その後、ノンバンクと農林系金融機関が大打撃を受けることになる。
 規制を有効ならしめる為には、市場の仕組みに熟知している必要がある。市場の仕組みを上手く活用しないと規制は有効に機能しない。市場の仕組みに逆らえば、当初期待した効果を上げられるどころか、逆効果にすらなりかねない。

 表面的な現象に目を奪われがちであるが、実際の市場取引は、思われているほど複雑なものではなく、単純である。即ち、売りと買いが原則である。売り圧力が強いか、買い圧力が強う科によってお金の流れる方向が決まり、金の流れる方向によって全体の水準が上下するのである。

 この様な市場の仕組みを前提として考えると直接的に取引に介入するような規制は、リスクが高い上にあまり効果が期待できない。
 例えば、変則(イレギュラー)な取引を規制したいと考えた場合、変則的な取引が発生する原因や仕組みを変えるべきなのである。取引そのものに働きかけたり、取引そのものを規制しようとしても狙った効果が上げられるとは限らない。変則的取引と言えどもそれが成立するのには、それなりの要因が隠されている。又、どの様な副作用、影響がどこに出るかの予測がかえって付きにくい。
 異常な取引が資金の流れに起因している事象ならば、資金の元を閉めるとか、資金の流れに何等かの負荷をかけるとか、資金の流れる方向を変えたり、分散させるのも一つの手段である。又、障壁を設ける手もある。基準を変えるのも効果的である。資金の流すパイプを太くするのも手段である。取引の前提となる条件に範囲を特定したり、制限、制約を設けるのも一つである。規制というのは、仕組みに対して構造的な掛けるものであり、力ずくで抑え込むことではない。
 現代経済の混乱は、負と規制の働きを認めないことに起因している。





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