なぜ、財政赤字になるのか



なぜ、財政赤字は、生じるのか、その機構、構造、要因を理解しなてと財政赤字は、解決できない。
財政赤字が生じる機構と財政を黒字にする機構は、同じ仕組みである。
経済を構成する部門には、財政と家計、そして、非金融法人、金融法人海外からなる。
財政赤字を引き起こす要因は、資金移動である。
資金移動は、貸借、売買、贈与(相続)、税によって引き起こされる。
貸借は、所有権の移動を伴わない資金移動であり、返済を前提としている。それに対して、他の資金移動は、返済を伴わない。
資金移動は、何らかの取引を仲介して実現される。市場取引量の総和はゼロに均衡する。
即ち、経済構成する部門間の取引量の総量はゼロ和になる。
資金移動は、資金の過不足を生じさせる。その過不足が、財政赤字の原因である。

個々の部門の赤字、黒字は過不足を現す。全体の過不足は均衡しているから財政赤字は、財政部門が資金不足主体である意味をしている。
それは、財政部門の他に、黒字主体が存在している事を意味する。

注意しなければならないのは、財政や家計でいう赤字と言うのは、資金不足主体という事である。損益上の赤字と言う意味ではない。

財政赤字を引き起こす構造は一様ではない。全体の総量がゼロ和であるから財政が赤字の場合、必ず財政以外の部門の中に黒字である部門がなければならない。故に、財政赤字の働きを理解するためには、財政赤字を引き起こす構造を知る必要がある。

現在の市場経済は、四つの空間と時間軸によって成り立っている。一つは、世界市場によって形成される空間、二つは、通貨圏によって形成される空間、三つめは、売買取引によって形成される空間、四つ目は、貸借取引によって形成される空間である。それに時間軸が組み合わさる事で市場経済は、構成されている。
それぞれの空間の取引量の総量は、ゼロ和に均衡し、閉じている。

売買取引と、貸借取引は、複式簿記を基礎文法にして成り立っている。
市場取引は、売り買い、貸し借りからなる。売り買い、貸し借りには、対称性がある。
取引は、単位期間によって損益取引と貸借取引、資本取引に区分される。短期間内のおける資金の過不足は、損益として計上され、その残高は、貸借に蓄積され、残高は、時間価値に還元される。
貸借取引は、金融市場を売買取引は、実物市場を形成する。

財政赤字を理解するためには、実物市場を構成する家計、財政、企業、海外部門の組み合わせを見てみる必要がある。
財政を赤字とした場合、他の部門の組み合わせは、六通りある。財政を黒字にする組み合わせも六通りある。金融は、この十二通りの形を補正するように貸借上で働く。


  


国民経済計算書

時間価値において重要な働きをするのは、残高と単位期間における増減である。なぜならば、単位期間の効用を示す比率は、残高を分母にし、単位期間の増減を分子とするからである。
残高は、長期資金の働きを形成し、単位期間の増減は、短期資金の働きを形成する。

また、売買取引は、経常収支を構成し、貸借取引は、資本収支を構成する。
経常収支と資本収支は、資金の流れを介して表裏の関係にある。

個々の経済主体、各部門の資金の過不足は、貸借の残高として長期資金に蓄積する。各部門の働きが硬直的だと一方的に貸借の残高として負の働きが積み上がっていく。
残高は、時間価値の分母を形成し、増減は、時間価値の分子を構成するから残高が増大すると分子である時間値を圧迫するようになる。時間価値とは、利益であり、金利であり、物価であり、所得の増加率であるから、利益も、金利も、物価も低下する。金利や利益、物価の上昇率が低下すると資金の過不足を調整する機能が低下し、資金の循環を悪くする。

為替は、国家間の資金の過不足を均衡するように変動する。

残高が累積が高じると社会の仕組みや制度を破壊する。常に、累積した債務を清算するようにしないと社会の強度が保たれない。

財政赤字を改善する場合は、財政赤字の働きを正しく理解したうえで、他の部門との関係を理解しなければならない。

例えば民営化と言うのは、公共部門の負債を民間に転移する事を意味している。民営化する事によってどのような効果を期待するのか、その点を明らかにしておかないと民営化しても実効力は上がらない。

財政赤字を改善したいからと言って財政だけを問題にしていたら真の解決には結びつかない。
バブル崩壊後、日本の財政赤字が深刻化した背景には、民間企業が黒字主体に転換したという事がある。
また、それ以前の財政赤字は、家計に預金残高が積み上がっていたという事も一因なのである。





国民経済計算書

財政赤字に対して企業、家計、海外各部門がどうかかわってきたかが、重要なのであり、金融はあくまでも補助的働きしかできない。
金融を主役にしたら、資金の流れを制御できなくなる。

財政を語る上で忘れてはならないのは、金融の働きとのかかわりである。財政は、通貨と国債との関係を通じて深く関わっている。通貨の本質は、裏側に、国債、即ち、国家の負債が関わっているからである。

経済政策は、各部門間の残高を一定期間に均衡するように調節する事を目的とすべきなのである。単に赤字であるか、黒字であるかではなく。振幅と総量、構造、偏りを調節するように考え方を変えない限り、市場を制御する事はできない。
その為には、個々の部門は、自分の利害だけでなく、全体の利害との整合性をとるように行動する事が要求されるのである。

全体は部分のために、部分は全体のはために働く。それが神の意志である。





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